
東京都が性別にとらわれないキャリア形成を目指し活躍できる社会実現に向けた気運醸成を図るイベントを開催
日本では今から40年前となる1985年に男女雇用機会均等法が施行。その後も多数の法案が成立し、女性の社会進出や終了環境の改善のための取り組みが行われてきた。
しかし、いまだに女性管理職やリーダーは多くはなく、課題が残っているのが現状だ。
東京都は性別にとらわれることなく、社会進出・キャリア形成をすることができる社会のために様々な取り組みを行っており、この度都内でイベント「Women in Action: Choosing Your Career」を開催した。
「Women in Action: Choosing Your Career」開催
自分らしいキャリアとはなんなのか、そして自分らしいキャリアを歩むためにはどうすれば良いのか、ということを考えるきっかけを創出することを目的として開催された「Woman in Action: Choosing Your Career」には、コロンビア大学 ビジネススクール教授のシーナ・アイエンガー氏が登壇し、基調講演を行なった。
アイエンガー氏は選択・意志決定における心理などを研究。
網膜の疾患により10代で失明したアイエンガー氏は、敬虔なシーク教徒だった両親との暮らしから「選択」についての研究を行い、24種類と6種類のジャム売り場を比較し、選択肢が多くなるほど選択することができなくなる、という研究結果を出したことは有名だ。
「私は皆さんに、自分の人生のことを考えていただきたい。皆さんがここまでどうして、どうやってここまで来たのか、そして皆さんという人物をどう作ったのかということを考えてください。生まれた時はどんな状況で、それがあなたの今日にどうつながっているのでしょうか。ランダムなイベントがあって、会った人や発見したことがあって、それがあなたの今日を作っているのです。あなたはどういう選択をしてきましたか?」
アイエンガー氏は常に選択して自分という存在ができているとし、
「恐れずにリーダーになってください。恐れずに生み出して、創り出してください。現代のヒーローは、選ばれたものではなく、選択するものだということを忘れないでください。」
と来場者に呼びかけた。
小池百合子・小路明善も登壇してパネルディスカッションを実施
基調講演後には、東京都知事の小池百合子氏、アサヒグループホールディングス株式会社の会長を務める小路明善氏、アイエンガー氏の3人と、株式会社カレイディスト 代表取締役 兼 CEOの塚原月子氏がモデレーターとして登壇してのパネルディスカッションを実施。
小路会長は、自身のビジネスキャリアの中で、ビジネスを辞めたくなった瞬間といった自身の経験を語語った。
労働組合の専従役員を10年ほど務めた小路会長は、当時イデオロギー論争で毎日論破される日々の中、政治や思想、哲学について学ぶために本を読んだことが自身のキャリアに強く影響したと説明。
「なぜこれが私のキャリアに強く影響したかというと、政治や思想、哲学の本を今日おいでの皆さんの年代の時に読むことによって、人生が幅広くなり、キャリアも幅広く多様にプランできるようになるからです。政治や思想、哲学の本、また異文化や異論に触れることは非常に大事だと思っています。」
と人生を幅広くすることが大切だと話した。
また小池都知事は10代〜20代を中東への留学で過ごした経験があり、それが父親が本棚に置いてあった中東・北アフリカ年鑑という一冊の本がきっかけだったのだと説明。
「異文化の中に自らが入ることによって、とても視野も広がったし、多くを大学の授業だけでなく、社会を学ぶことができたのはとても大きかったです。ですから、父がたまたまその本を置いていたということがとても大きかった。それから学ぶ先を中東にするというのはとても珍しいと思うんですが、母はむしろそれを応援してくれました。それはいい選択だと言って、後押しをしてくれたのですから、父と母に感謝をしたいと思います。」
と自身の経験を語りかけた。
一人ひとりが性別にとらわれず、自分の経験を主体的に選択できる社会の実現というテーマにアイエンガー氏は、
「どんな会社でもイノベーションから利益を得ますよね。コスト削減や売り上げが上がるということもありますが、例えば従業員からアイデアを募る提案箱を作る際は、男性・女性といった身分などを峻別し、提案が良いか悪いかだけで選ぶべき。そういった小さなことでパフォーマンスが上がっていくんです。」
と企業に資するものについて自身の考えを説明した。
その後は都内の高校生らが登壇し、意見交換会を実施。
「先見性と選択の力がリーダーには必要だとおっしゃっていましたが、女性の多くが今、未来のことを考えれば考えるほど、自分の限界を自分で決めつけてしまい、結果的に選択肢が狭まってしまっているなと私は思っています。その将来の夢や目標を模索する今の女子高生に、未来と向き合うことについてのアドバイスをいただきたいです。」
と質問した高校生に対し、アイエンガー氏は、
「企業があなたの価値を見てくれなかったり、適正な賃金を払ってくれないならば、あなたが一歩踏み出し、(そんな企業から離れて自ら)ビジネスを始めればよいので。そこであなたの価値を提供すればいいんですよ。」
とエールをおくった。
また小路会長は「今の延長線上で未来の自分を作らないでいただきたい」と語りかけた。
「例えば、AIが10年〜20年前にこれだけ産業にとっても生活にとっても重要なテクノロジーになると予測した人は、そんなに多くなかった。社会・環境・経済は予測できないスピードで、予測できないような状況で変化、進化していきます。人間も同じで、今の自分とは違う、進化した自分が将来必ずあります。ですから、ゼロベースで未来の自分の姿をクリエイティブ・イマジネイティブして、どういう人間になりたいかということをゼロベースで考えて、そこからバックキャストして、“じゃあ、今何をしたらいいのか?”というような思考で人生を歩んでいただくことをお勧めしたいと思います。」
とアドバイスした。
高校生たちからの質問、そしてそれに答える登壇者らの言葉に、来場した多くの方が真剣に耳を傾けている姿が印象的だった本イベント。
東京は確実に一歩づつ、性別にとらわれることなく、希望するキャリアを歩むことができる都市として歩みを進めている。