
不動産業界に新たな風を!東通グループが描く『PropTech』を活用した未来のビジョンとは
東通グループは、2025年6月に事業戦略『TOTSU NEXT VISION』を発表。その事業戦略のなかで、よりインパクトを残したプロジェクトである『不動産をもっと自由に大作戦』
不動産を”所有・管理するもの”から”流動性と柔軟性のある都市資産”へと再定義する挑戦を行っています。
そしてこの度、東通グループ 執行役員である桜井吉男氏より、IT・テクノロジー業界に従事されてきた経歴を活かし、従来の不動産業界を変革していく『PropTech(プロップテック)』のビジョンについて伺いました。
IT・テクノロジーを礎に不動産業界を変える
ー桜井吉男氏の経歴ー
東通グループ 執行役員(元ByteDance Japan 上席執行役員・兼* Lark Japan株式会社* 代表取締役 社長)
北京の大学への留学を経て、大学を卒業後、中国・日本において起業し、会社経営を行う。
国際貿易、越境EC、OtoO(Online to Offline)ビジネスや、経営コンサルティング事業、その後FinTech、InsurTechと、20年以上、多岐に渡り日中ビジネスに従事。
2018年4月より、ByteDance Japanの立上げ黎明期より参画、TikTokの立上げに従事。
2022年2月にLark Japan株式会社代表取締役社長に就任、2023年1月より開始した東京ヤクルトスワローズ村上宗隆選手をアンバサダーに起用したキャンペーン等を主導。
2025年1月より東通グループ執行役員に就任、経営企画、及びブランディング業務を管掌。
*Lark Japan株式会社はByteDance傘下の日本法人です。
不動産業界では異色の経歴を持つ桜井氏。IT・テクノロジーという異業種からの視点により不動産業界の根本的な定義から再構築を見据えます。
桜井氏は不動産業界に入り、まず業界の情報共有や意思決定におけるアナログなやり方に課題を感じたのだそう。
「紙・FAXによるやりとりや、属人的な判断に依存する文化がまだ根強く残っており、業務全体の非効率さにつながっています。」と古くから残る業界の文化や体制について指摘しました。
また構造的な課題として、
「不動産のビジネスモデル自体が”建てて、貸して、終わり”となってしまっている点があります。東通グループではこれまで再開発やリノベーションを通じて、建物やエリアの価値を再定義することに注力してきました。」
東通グループは不動産というビジネスモデルの概念から変革していくことを掲げているのだと語る桜井氏。
しかし業界全体ではまだ“完成した瞬間がピーク”という考え方が一般的なのだそう。
そこの意識に対しては「これからの時代、不動産は“完成してからがスタート”であるべきです。建物をどう使われるか、どう管理され、どう再活用されていくか。こうした運用フェーズを見据えた発想が欠かせません。」と断言。
東通グループでは、そうした価値の“運用”を前提とした不動産モデルへ転換を進めています。
不動産業界に変革をもたらす『PropTech』
PropTechは『Property × Technology』の略で、不動産の取得・運用・管理・売買、そして暮らしに至るまでをテクノロジーで進化させる概念であり、スマートロックやIoT設備、バーチャル内見、さらには不動産トークン化やスマートコントラクトといった金融領域との融合も含まれます。
「東通グループでは、そうしたハード面の導入だけでなく、不動産全体をひとつの『OS(オペレーティングシステム)』として捉え直す“ソフト面”の変革にも注力しています。業務のデジタル化や住まいのデータ化を通じて、契約・運用・顧客接点などを一元管理できる状態を構築することで、より柔軟で透明性の高い不動産体験を実現しています。」
と説明する桜井氏。
IT・テクノロジーの技術を駆使して不動産業界をより先進的かつ効率化を計ります。
さらにその先にあるのが『都市のOS化』
「個々の建物を起点に、エネルギー・移動・居住・コミュニティといった都市機能全体をデータとテクノロジーでつなぎ、街そのものがアップデート可能な存在へと進化していく。私たちはPropTechを、不動産という枠を超えた“都市そのものの再構築”の鍵と位置づけています。」
と掲げました。
10年後のビジョン
『不動産をもっと自由に大作戦』を打ち出した事業戦略発表会でのトークセッションでも印象的な話題であった、50年後の未来を想像した街づくり。
未来を見据えて革新を続ける東通グループの10年後のビジョンについても伺いました。
現在、東通グループは設立から6年を迎え「第2創業期」として新たな成長フェーズに突入しています。これまで培ってきた投資・開発・再生・ホテル・管理という5つの事業を軸に、中長期の視点で5つの戦略を再構築。
その一環として掲げたプロジェクトが『不動産をもっと自由に大作戦』
とてもキャッチーで親しみやすいプロジェクト名ですが、こちらの具体的な構想として桜井氏は「このプロジェクトは不動産を“所有・管理するもの”から“流動性と柔軟性のある都市資産”へと再定義する挑戦」と説明し、
「再開発やリノベーションを通じて都市や建物の価値を再発見し、テクノロジーやデータの力で“使い続けられる資産”に変えていく。“完成して終わり”ではなく“完成してからが始まり”という新しい不動産観を実装していくプロジェクトです。最終的に目指すのは『都市と人との関係性を再編集する企業』になること。2030年までに運用資産3,000億円の達成を一つのマイルストーンとしつつ、ただ資産を積み上げるのではなく、社会や都市に新しい文脈をつくる存在でありたいと考えています」
と展望を語っています。
新しい社会や都市づくりから、東通グループの提供する新たな価値観によって未来へ貢献を担う。
そして『10年後に選ばれる企業』になるためには、企業としてはどのような変革が必要であるかを尋ねると桜井氏は、
「“商品を売る企業”から“関係性をつくる企業”への転換が必要です。都市も建物も、テクノロジーと人との接点で進化していく時代。10年後に選ばれるには『常に変化し続けること』。つまり企業自身が『可変的』である必要があります。そのためには社内のITリテラシー向上、オープンな組織文化、スピード感ある意思決定が不可欠だと考えています。」
と主張。
東通グループが目指す『都市と人との関係性を再編集する企業』にも通じる存在であり、そして常に変わっていくことの重要性を提唱します。
さらに、不動産業界の変革には東通グループ内でのコミュニケーションにも桜井氏が意識しているポイントがあるのだとか。
「私が意識していることは、“Why(なぜやるのか)”を常にセットで伝えることです。不動産業界の変革は単なる業務改善ではなく、業界構造そのものを変える挑戦です。そのためメンバーにはタスクの“What(何をやるか)”だけでなく、“Why(なぜやるのか)”を明確に共有するようにしています。納得感があることで、自走する力が生まれます。」
とコミュニケーションの意識改革にも注視。
また、
「トヨタの『5W1H』的な思考をベースに、“Why(なぜ)”x 5、そして“How(どうやって)”やるかをセットで確認・共有するよう心がけています。特に“How”に関しては、私が決めきるのではなく現場に最適なやり方を一緒に考え、試行錯誤できる環境づくりに重きを置いています。リーダーとして大事なのは、方向を示しながらも現場の創意工夫を信じて任せること。そのためにも日々の1on1やチームミーティングでは、問いかける姿勢と聞く力を大切にしています」
と変革には柔軟な能動的姿勢が必須であると語りました。
最後に桜井氏が目指す未来・目標について聞くと、
「私の目標は、東通グループを『都市価値を編集する企業』として再定義することです。資産運用・開発・管理・暮らし、そしてデジタル。そのすべてを横断し、データとリアルを融合させることで、これまでにない不動産体験を提供したいと考えています。またテクノロジーによって多様な人材が活躍できる組織文化を創り、日本の都市と産業の未来に貢献していきます。」
と一貫した桜井氏の指針を伺うことができました。
さらに、
「不動産は“動かない資産”と書きますが、これからの時代は“不動産こそが動き続ける”べきだと私は考えています。テクノロジーと人の力で、都市や建物はもっと柔軟に、しなやかに進化できる。『不動産をもっと自由に』という私たちのスローガンには、そうした未来への想いが込められています。業界の常識を疑い、都市の価値を問い直しながら、次の10年をともにつくっていける仲間と出会えることを楽しみにしています。」
と伝え、桜井氏の一貫したビジョンに終始熱意を感じる想いを伺えました。
事業戦略発表会の際にも受けた印象なのですが、東通グループのつくっていく社会と都市のビジョンや視点、取り組みは聞いていてとてもわくわくします。
『都市価値を編集する企業』東通グループのつくっていく10年後、そして50年後の未来を期待しております。
東通グループHP:https://www.totsu-group.com/