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中外製薬が描く社外パートナーとの共創によるオープンイノベーションの現状と未来

中外製薬株式会社は、サイエンスとテクノロジーによるヘルスケア産業の未来をテーマに、都内で共創によるイノベーション創発に焦点をあてたビジネスカンファレンス「CHUGAI INNOVATION DAY 2025」を開催しました。

 

「CHUGAI INNOVATION DAY 2025」開催

中外製薬は、独自の技術とサイエンスを強みとする、研究開発型の製薬企業。

2025年で創業100周年を迎えた中外製薬は、ヘルスケア領域のイノベーションやDXに関心を持つビジネスパーソン・学生を対象とした「CHUGAI INNOVATION DAY 2025」を都内で2日間にわたり実施。

DAY1では、イノベーションがどのように生まれ発展していくのか、そしてこれまで行ってきた中外製薬のイノベーション事例などについて紹介を交えながら、様々な視点から未来への指針を議論しました。

『オープンイノベーションで加速する、中外製薬の「未来像」』と題したセッションでは、イノベーション実現に不可欠な最後の1ピースである「共創」をテーマに基調講演とパネルディスカッションを実施。

オープンイノベーションの現在地と、中外製薬が目指す未来像を共有しながら、外部パートナーの視点も交えて真の共創に必要なものを探りました。

基調講演「自社技術の視点から考えるオープンイノベーション」に登壇した、中外製薬株式会社 研究本部 創薬企画推進部 Open Innovation Senior Expert Scientistの松田穣さんは、

「中外製薬のオープンイノベーションのユニークな点は、あくまでも自社の研究が基盤となっているというところです。我々のオープンイノベーションは、自社の技術とシナジーをもたらして、いかに価値を発揮できるかを目的としています。」

とコメント。

中外製薬における非臨床段階の創薬プロジェクトの約30%は、社外パートナーとのコラボレーションを通じて患者さんへの価値提供を目指しているのだと説明しました。

また、2024年から本格始動をはじめたChugai Venture Fund(CVF), LLC Associateの安藤義和さん、中外製薬株式会社 製薬技術本部 製薬研究部(バイオプロセス担当)統括マネジャーの渡邊洋介さん、味の素株式会社 バイオ・ファイン研究所 マテリアル&テクノロジーソリューション研究所長の奥住竜哉さんらが登壇。

それぞれがオープンイノベーションなどをテーマに、具体的な事例をもとに基調講演を実施。

会場では、来場者たちが真剣な眼差しを向け、中外製薬の事例に耳を傾けました。

 

中外製薬がなぜオープンイノベーションに取り組むのか

その後、直前のセッションで登壇した方々によるパネルディスカッションも実施。

研究開発力に自信を持って取り組んでいる中外製薬が、なぜオープンイノベーションに積極的に取り組んでいるのかについて松田さんは、

「中外製薬は自社技術でユニークなものが多いのは事実ですが、それは現時点での話であり、世の中の色々な組織を見ても、栄枯盛衰は必ずあります。ずっとサステナブルに強みを発揮できるものは何かと考えた時、“変化に対応できるものが一番強い”。変化は外に求めるのが一番良いので、常に外から刺激を受けて自分たちの弱いところを克服していくことが必要です。だからこそオープンイノベーションは重要だと考えています。」

と、自身の考えを明かしました。

味の素でのオープンイノベーションの位置付けについて奥住さんは、

「弊社では、BtoBビジネスは、広く捉えれば全てオープンイノベーションではないかと考えています。その中でも、我々は基本的にエンドの人々(患者など)にはアクセスできないことが多いので、パートナーさんと一緒になって届けていこう、という考え方をしています。」

とコメントし、通常のビジネスとしての協業と、新しい技術を取り入れていくためのオープンイノベーション、という2つの柱で取り組んでいると説明しました。

また、現場からは「何故自社でやらないのか?」と研究者から反発があるのではないかと問われた渡邊さんは、

「自分たちの強みと相手の強みを掛け合わせ、どうやって新しい価値を作っていくのか、どういう価値を作っていくのか、もう少し踏み込んで考えていくところはあると思っています。」

と、製薬部門から見た意見を述べました。

安藤さんはCVFから見たオープンイノベーションの推進について、

「オープンイノベーションという言葉を耳にし、定義もかなり浸透していて想像しやすいと思います。ただ、オープンイノベーションは、結局どのタイミングで誰とどのような形でやるかでインパクトが変わりますので、多様な価値観でイノベーションを目指すことがこれから必要だと思います。」

と持論を展開しました。

今後は「病気を治すのではなく予防するというパラダイムシフトが少なからずあるのではないか」と語った松田さん。

今後、オープンイノベーションに関わる研究者・博士の方々に対するアドバイスを伺うと、

「海外の企業とのコラボレーションで聞いた話なども含めると、まずは自分の研究領域をしっかり取り組んでいくことが大事です。オープンイノベーションで海外の人たちと議論する際に『この人はサイエンスをよくわかっているな』と思われないと、話が先に進まなくなってしまうので、自分の専門性を確立することが大切ですね。」

と、自身の研究について真摯に向き合い、誠実に相手とコミュニケーションをとっていくことが何よりも大切なことだとコメント。

また、海外企業・スタートアップとのオープンイノベーションも視野に入れるならば、英語ができることが非常に重要だとも語った松田さんは、

「日本のエコシステム※は、アメリカなどと比べるとまだ発展途上かなという部分もあります。中外製薬だけではなく、他社さんも一緒になって全体を底上げし、世界の患者さんに貢献できるようなエコシステムを作っていきたいなと思っていますので、ぜひ皆さんと取り組んでいきたいです。」

※複数の企業がお互いに協力し、それぞれの業務やサービスを補う構造のこと

とオープンイノベーションに積極的な方々へ向け、メッセージを送りました。