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放置すると仕事・日常生活に影響も?年末年始の暴飲暴食・生活の乱れで起きる「胃疲れ」との向き合い方と日々の胃活とは?

クリスマスからはじまり、年末の忘年会、年明け後の新年会など、暴飲暴食をしがちな年末年始シーズン。

さらに長期休暇ということもあり、生活リズムも崩れてしまいがちな時期だ。

胃の不調を訴える方が多い時期でもあるが、実はその「胃の重さ」や「食欲不振」は、単なる食べ過ぎではなく「胃疲れ」かもしれないことをご存知だろうか。

 

ただの食欲不振とは違う「胃疲れ」とは?

川西市立総合医療センター総長の三輪洋人先生に伺うと、“胃疲れ”とは胃の働きが一時的に低下し、食べたものをうまく消化できなくなった状態のことなのだとか。

主な症状は胃もたれや膨満感・食欲不振・吐き気などで、暴飲暴食やストレス・睡眠不足などが重なることで自律神経が乱れ、その結果胃の働きの悪化や胃酸の過剰分泌といった、胃の不調症状が起きるという仕組みだ。

また、年末年始は当然寒い時期でもあるため、体が萎縮して姿勢が悪くなることで胃に負担をかけ、引き起こされるケースも。

放置すると慢性的な胃の不調につながり、気力の低下・不安感・抑鬱気分・集中力の低下などを引き起こすこともある症状のため、軽視しないように気をつけよう。

【胃疲れチェック】
・朝から胃が重く、空腹にならない
・胸やけ、げっぷがよくでる
・食後にお腹のはりがある(膨満感)
・すぐにお腹がいっぱいになる(満腹感)
・胃がキリキリと痛む
・吐き気がする

これらの中で、1つ以上チェックがつくと「胃疲れ」のリスクが高いと考えられるため、胃疲れを起こしているかを確かめてみてほしい。

最近の調査では、10人に1人は慢性的な胃の不調を抱え、仕事を休んでしまったり早退するなど、仕事に大きな影響を与えてしまうことも分かっている。

胃の不調を感じた時には、薬で応急処置をしたり我慢することが多いものの、このような慢性的な胃の不調は原因を知って対処しなければ、繰り返し悩まされることになる。

つまり、日々の胃のケアが非常に重要になってくるのだ。

一方、胃の不調には胃がん・胃潰瘍など死につながることもある重篤な病気が潜んでいる可能性もある。

胃の不調が続く場合は、簡単に自己判断せず、医療機関を受診してほしい。

 

年末年始に試したいセルフケア方法

胃の不調の原因となる「自律神経の乱れ」

これは残念ながら薬などではコントロールすることは難しい。

十分な睡眠時間を取って運動をし、食事に気を配ることが大切となる。

胃の不調を感じる方におすすめな「胃活プログラム」を三輪先生が紹介してくれた。

 

●超手抜き朝ごはん

睡眠中は食事をしているのと同じ状態で、胃は食べ物を待ちかまえている。

そして朝食を摂ることにより胃腸が動きはじめる。この一日のリズムが「胃腸の調子」を良くしていく。

ある研究では「朝食を食べるグループ」「食べないグループ」の2つに分け、それぞれの胃の調子を調べたところ、朝食を食べないグループの方が圧倒的に「胃の調子が悪い人が多い」という結果が出た。

そのことからも、朝食をしっかりと摂ることで胃の調子を良くすることが肝要だ。

胃を目覚めさせて生活のリズムを整えるべく、起きたらなるべく早く、少なくとも2時間以内に朝食を摂ることが重要。

栄養バランスが整った朝食をたくさん食べなくても、朝食ではバナナやヨーグルトといった簡単なもので充分足りる。

「朝はあんまり食欲がない」「食べすぎたので朝は胃を休めたい」という方も、バナナやヨーグルトを一口食べるところからチャレンジしてみてほしい。

また、朝食はできるだけ決まった時間に摂ることも大切だ。

時間を決めることで「生活のリズム」のスイッチが入り、自律神経の働きを整えるのにも役立つため、食べる時間にも気をつけよう。

 

●菌活

乳酸菌や麹菌・酵母菌・納豆菌など、体に良い菌を摂る「菌活」

こうした菌を含むヨーグルト・漬け物・納豆などを食べることで、腸の調子が整って便通が良くなったり、免疫力を高める効果が期待される。

一方、胃の中には胃酸が分泌されているが、胃にも菌活は有効なのだろうか。

胃酸には塩酸が含まれており、この塩酸には食べ物と一緒に入ってきた雑菌も殺菌してしまうほど強い作用がある。

これによって、食事などで摂取した善玉菌の多くも死滅してしまうのだ。

しかし、強烈な胃酸に負けずに活躍する乳酸菌も存在しており、中にはピロリ菌の活性を抑えたり、胃痛・胃もたれなどを和らげてくれる作用をもったLG21乳酸菌入りヨーグルトなどがある。

このように、善玉菌を含む食品を積極的に食べ、胃のための菌活を始めてみてほしい。

 

●胃の温活

夏の暑い時期に、冷房を効かせた部屋にいることで不調を起こすことはよくあるだろう。

これと同じ考えで、これからの季節は就寝の際にお腹を冷やさないよう心がけることが大切だ。

腹巻などを活用してお腹が冷えない工夫をしたり、火の通った温かいものを食べ、胃働きを良くするように気をつけよう。

 

●正しい姿勢で胃の負担を軽減

デスクワーカー・ドライバーのように、長時間椅子に座って仕事をする方は、それだけで胃を押し上げて圧迫しているため、胃の不調を抱えやすい。

仕事中に前かがみの姿勢が多い人はもちろん、猫背の人も注意が必要だ。

お腹を圧迫して胃の内圧が高まると胃酸が逆流しやすくなり、胃酸によって食道に炎症を起こす「逆流性食道炎」になりやすくなる。

また、自宅でリラックスしている時、スマホを眺めている時は、誰でも肩が内側に丸まって猫背になりやすくなっているため、普段から姿勢が良くないと自覚している方だけでなく、こういったことが多いと自覚がある方は「正しい姿勢」を意識してほしい。

【正しい立ち姿勢】
背筋を伸ばして肩の力を抜く。
重心は、体の真ん中に。
胸を張りすぎたり、お尻を突き出したりしないように気をつける。

【正しい座り姿勢】
椅子の前で、正しい立ち姿勢をとる。
そのまま、椅子にすとんと腰を下ろす。
浅く腰かけ、背もたれや肘かけに頼らず、背中をまっすぐ伸ばすことを意識しよう。

【胃酸の逆流を感じる場合】
左側を下にして寝ると、食道より胃の位置が低くなるため、胃酸の逆流が起こりづらくなる。

【逆流を感じないが胃もたれがある場合】
胃の出口が下になるよう、右側を下にして寝ると消化を促進させる。

【胃酸の逆流と消化不良、両方がある場合】
上向きで寝る。
枕の高さは10〜20cmの間が理想。
うつ伏せで寝るのは避けよう。

 

●三輪洋人(みわ・ひろと)先生

消化器内科医、川西市立総合医療センター総長。
日本消化器病学会前理事・財団評議員・専門医・指導医、日本内科学会前理事・評議員・指導医・認定内科医、日本内視鏡学会社団評議員・指導医・専門医、日本消化管学会功労会員・代議員・専門医・指導医・胃腸科認定医、日本神経消化器病学会前理事長、Asian Neurogastroenterology & Motility Association ANMA前理事長。
1982年鹿児島大学医学部卒業。順天堂大学、米国ミシガン大学を経て、2004年兵庫医科大学 消化器内科主任教授に就任。
その後、同大副学長、理事なども歴任し、2022年より現職。著書やメディア出演も多く、2022年9月からはYouTube「Dr.三輪洋人の健康チャンネル」を開設。幅広い世代に健康情報を発信している。
2025年7月14日に「胃の不調の原因と対策 胃活の教科書」(毎日新聞出版)を出版。

 

胃疲れ解消にぴったりなレシピ

管理栄養士の渥美まゆ美氏が、消化によく胃に優しいレシピを考案しているので、ぜひこれからの季節の参考にしてみてほしい。

普段の料理に発酵食品などを組み合わせ、胃に優しい食事を心がけよう。

●レシピ1:あったか湯豆腐ヨーグルトみそだれ

【胃に優しいポイント】
・胃に負担が少なく良質な植物性のたんぱく質がとれる豆腐
・胃腸の動きを活発にしてくれる働きがあるヨーグルト
・発酵食品である味噌を組み合わせて胃に負担が少なく体の回復を助ける一品

●レシピ2:とん平焼きヨーグルトソース

【胃に優しいポイント】
・胃への負担が少なく、栄養価の高い卵と胃腸の回復を助けるキャベツを活用
・胃の負担を大きくする脂であるマヨネーズは、ヘルシーで胃腸の動きを活発にしてくれる働きがあるヨーグルトに変えることで、胃腸の回復の助けとなる一品に

●レシピ3:ホットバナナヨーグルトドリンクシナモン風味

【胃に優しいポイント】
・消化が良く腸内環境を整えてくれるオリゴ糖を含むバナナとはちみつを胃腸の動きを活発にしてくれる働きがある乳酸菌を含むヨーグルトと合わせ、胃腸に優しく温かく飲めるドリンク
・血流促進の助けと香りづけのためのシナモンもポイント

いかがだっただろうか。

「もしかして私の胃の不調は“胃疲れ”かも?」と思った方は、胃のセルフケアなどに気をつけてみてほしい。